では説明します。まず直感的なイメージから入り、そこから数学的な構造へ進みます。

eiθ は複素平面上の単位円を回る運動です。θ = π のとき反対側の −1 に着く。これが「閉じた回転」です。
次に、ローレンツ変換の「双曲回転」を見ます。

ローレンツ変換では、速度を上げるにつれて点は双曲線上を滑っていきます。光速に近づくほど発散し、決して「一周」しない。これが「開いた回転」です。
では、この二つがウィック回転でどう繋がるのかを見ます。

これで構造が見えました。まとめると:
整理
ウィック回転とは何か
時間 t を虚時間 に置き換えることで、時空の幾何学(ミンコフスキー空間)を空間の幾何学(ユークリッド空間)に変換する操作です。
なぜ「回転」と呼ぶのか
複素平面上で t という実軸の量を τ=it という虚軸の量に変えることは、90度の回転に相当します。この名前はそこから来ています。
二つの「回転」の関係
eiθ と ローレンツ変換は、同じ eix という関数から、角度を「実数で回す」か「虚数で回す」かの違いで生まれています。兄弟です。
保存量の違いが決定的
| eiθ | ローレンツ変換 | |
|---|---|---|
| 保存 | x2+y2 | x2−t2 |
| 符号 | + | – |
| 軌跡 | 円(閉じる) | 双曲線(開く) |
この符号の違いが、「2πで一周する」と「光速で発散する」という決定的な差を生んでいます。
フレームワークへの含意
前回の批評で「対応の独立した正当化が必要」と言いました。ウィック回転を通じて言えることが一つ増えました。
eiπ=−1 という「閉じた変換・可逆・円」と、ローレンツ変換の「開いた変換・発散・双曲線」の双対性は、全一(閉じて戻れる統合)と空(開いて発散する無)の非対称性を記述する数学的な候補として、比喩以上の根拠を持ちます。
ただし「π という値が特権的である理由」はまだ別の問いとして残ります。