人間の思想の歩み 山崎正一

インド、ギリシア、シナ、でも、この新しい精神の事業の担い手たちは、いずれも個人の名を名乗り、あるいは、個人の名をもって呼ばれた。

個人の自由な創意がそこでは求められ、伝統に縛られない新しい個人が台頭し、実力の時代となる。従来の伝統や習慣はたえず崩れる。それは成長と発展の時代である。

都市国家の連合体が求められ、またひとたび成立した連合体も、そのままの形では維持することはできない。より強力な広範囲の結合が求められ、やがて統一的な大規模の領土国家が求められてくる。

小規模の地域社会が、次第に、より大規模な共同社会体へと結びあわされ統合されようとする。インドにおいても、ギリシアにおいても、またシナにおいても、そういう過渡期の混乱と流動の時代である。

人々は、新しい法途を求め、世界と人生とに対する新しい設計図を、また新しい座標系を求めた。

映画:フィッシュマンズ

映画見てきました。

https://fishmans-movie.com/

ただのファンなので、
いままでは気持ちよく聞ければいいや、とかしか考えてなかったのですが、
実際に一緒に活動されていた方たちは、
現実としてあって、今も悩まれていることを知りました。

すごいいい音楽だなと思っていたのですが、
メンバーの話を聞いて、佐藤さんの不在について少しだけですが、実感を持ち始めました。

最後の佐藤さんの声が入った時に、メンバーの本気を見れて、男気を感じました。

知れて良かった、日本代表 Fishmans

夏目漱石「草枕」

智(ち)に働けば角(かど)が立つ。
情(じょう)に棹(さお)させば流される。
意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。
とかくに人の世は住みにくい。

住みにくさが高(こう)じると、安い所へ引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいと悟(さと)った時、詩が生れて、画(え)が出来る。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。
やはり向う三軒両隣(りょうどな)りにちらちらするただの人である。
ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。
あれば人でなしの国へ行くばかりだ。
人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容(くつろげ)て、束(つか)の間(ま)の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。

ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降(くだ)る。
あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故(ゆえ)に尊(たっ)とい。

住みにくき世から、住みにくき煩(わずら)いを引き抜いて、ありがたい世界をまのあたりに写すのが詩である、画(え)である。

あるは音楽と彫刻である。

こまかに云(い)えば写さないでもよい。

ただまのあたりに見れば、そこに詩も生き、歌も湧(わ)く。

着想を紙に落さぬともの音(おん)は胸裏(きょうり)に起(おこ)る。